佐田岬灯台利活用推進コンソーシアムは、11月4日(土)に「佐田岬半島シンポジウム~歴史を学び未来を照らす~」を開催しました。
元灯台守阿部富士男さんが登壇!当時の生活を振り返る
シンポジウムの第1部のテーマは「佐田岬灯台の歴史を振り返る」。佐田岬灯台を管理する松山海上保安部交通課の菅原大課長からは、「日本の灯台の歴史とその役割」について、また、佐田岬半島における地域史の専門家である佐田岬半島ミュージアム副館長の高嶋賢二主任学芸員からは「佐田岬灯台の文化財的な価値」についてそれぞれの視点から講演がありました。
その後、本日の特別ゲストである元灯台守の阿部富士男さん(91歳)が登壇。会場は大きな拍手に包まれます。灯台守として勤務していた当時を振り返り、荒天時に過酷な状況下で行う気象観測や、水道がなくまた病院や学校から離れた灯台官舎での暮らしなど不自由が多かった当時の生活を語りました。また一方で、当時灯台にやってくる観光客に藁草履を準備して灯台内部を案内をしていたことや、地元住民との家族ぐるみでの交流が楽しみの一つであったことなども語っていました。次々と飛び出す当時のエピソードに参加者は興味深く聞き入っていました。
元灯台守、高校生、学芸員…みんなで考える佐田岬灯台の未来
第2部の「海と灯台サミット2023」へのオンラインを経て行われた第3部では、「佐田岬灯台の魅力と今後の利活用」をテーマにパネルディスカッションが行われました。まずは、佐田岬灯台の魅力を改めて整理します。第2部より引き続き登壇した阿部さんからは「何といっても景観。季節によって変化する景色と海とのバランスが素晴らしい。灯台守として各地の灯台に9回転勤したが、私の知る範囲では(佐田岬灯台の景観が)全国一番。」と太鼓判を押していました。他、髙嶋学芸員は「マニア向けに言うと、歴史ある八角形のコンクリート造りの塔形。」、菅原課長は、赴任後初めて佐田岬灯台を訪れた際の不安と感動の入り混じったエピソードを、コンソーシアム代表の宇都宮圭さんは「海からも陸からも、昼も夜もカッコいい。」といつでもどこからでも楽しめる佐田岬灯台の楽しみ方を紹介しました。
続いては、本日の主題である今後の灯台利活用について。まずは、地元高校である愛媛県立三崎高等学校1年生の中村吏騎さんから、「灯台直下にある使われていない畜養池を活用して海中水族館を作る。子どもも大人も集う場所にして、次は私たちが灯台に明かりを灯したい。」とアイデアが出ました。続いて菅原課長は、「今年3月に伊方町を”航路標識協力団体”に指定したことで、今後の灯台活用の幅が広がり、引き続き伊方町や観光公社と連携していきたい。」とのことを話していました。髙嶋学芸員は「官舎復元と参観灯台化」を実現したい思いを、また宇都宮さんはコンソーシアムが掲げる「小さな灯台ホテル構想」の実現に向けて、行政や関係団体みんなで作り上げることの重要性を説きました。
そして、阿部さんからは「観光という面から、灯台官舎跡地を活用しない手はないです。昔は水がなくて苦労したが今は水道が通っている。」と力強い発言がありました。更に、阿部さんから官舎跡地の払い下げが実現する可能性について菅原課長に尋ねる場面も。「可能性があるのなら官民一体となって地元の人たちが努力すべき。泊まれる灯台、登れる灯台を是非実現したい。それが過去に灯台守として勤務した私の願いです。」と阿部さんご自身の熱い思いを述べたところで、パネルディスカッションは締めくくられました。
●佐田岬灯台とは(愛媛県西宇和郡伊方町)
四国最西端に立つ鉄筋コンクリート造の灯台。1918年の点灯以降、100年以上に渡って豊後水道の海の安全を守ってきた。2016年に「恋する灯台」に認定。2017年3月に国登録有形文化財に登録。日没後、数分間だけ光源が緑色に発色する「エメラルドタイム」が見どころの一つ。
イベント名 | 佐田岬灯台シンポジウム〜歴史を学び未来を照らす〜 |
参加人数 | 約40名 |
日程 | 2023年11月4日(土) |
場所 | 佐田岬半島ミュージアム |
主催 | 佐田岬灯台利活用コンソーシアム |