月に1度、今治明徳短期大学地域連携センター長・大成経凡さんに寄稿していただく海にまつわるコラム。
今回は、【「海岸ジャックin IMABARI」へゆく】です。
近年、今治市のみならず、愛媛県全体でビーチクリーンの催しが多い。こと愛媛県に限っては、全国で5番目に長い海岸線(約1,700㎞)を誇り、海流でここへ漂着するゴミも多い。 筆者が住む今治市の海岸は、延長距離の長い白砂のなぎさが多く、唐子浜や桜井海岸には白砂青松の瀬戸内海の原風景が残されている。桜井海岸にある志島ヶ原は国指定名勝である。そのような美しいなぎさでも、落ちているごみに目がいくと興覚めた気持ちとなる。
筆者が勤務する今治明徳短期大学は、在学生の多くが留学生で、海のない地域で育ったネパール・ミャンマー・中国の出身者が多い。日本は島国であるから、海や船は身近な存在であり、高縄半島と芸予諸島の地域からなる今治市は、特にそれらを凝縮した場所といってもいい。このため、拙授業ではフィールドワークを多く取り入れ、造船所見学や海上遊覧(乗船)、多島美や海峡の眺望を楽しむ機会を多く設けている。そのため、留学生からは〝旅行〟と認識されている。
昨年の冬、行き先に困った際、海岸清掃にチャレンジすることになり、鴨池海岸・大角海岸・織田が浜などを下見したところ、漂着ゴミが少なくて困った覚えがある。来島海峡の眺めが美しい湊・大新田海岸では、下見の際に自主的に清掃をしている高齢女性に遭遇した。彼女によれば、指定場所に拾ったゴミを置いておけば、回収車が集めにくるのだという。親切にも、市役所でもらえるという、専用のゴミ袋を分けていただいた。
【湊海岸の海ごみ回収ボックス】
授業当日、学生30名ほどを海岸へ案内したところ、宝探しでもするかのようにゴミ袋を携え散っていった。同所は来島海峡に臨む絶景スポットでもあった。その時は、漂着した木くずを多く拾い集めたように思う。筆者としては手抜き授業のはずだったが、後で感想を訊くとちょっと意外な反応が返ってきた。参加したミャンマー・中国・ベトナム人留学生たちは、清掃ボランティアそのものをやったことがなく、〝貴重な体験ができた!〟と喜び、教育効果は大であった。そこで、昨年とは違うメンバーで、今年の秋は唐子浜で漂着ゴミの清掃ボランティアを行った。秋に入学したばかりのスリランカ・インドネシア留学生は、ゴミの分別に苦労している様子だったが、楽しそうな表情が印象に残った。
そして11月24日(日曜)の「BEMAC Presents 海岸ジャックin IMABARI」のイベントに筆者は学生有志と参加。呼びかけたところ、9月下旬に来日したばかりのミャンマー人留学生3名(国際観光ビジネスコース1年生)が志願してくれた。
【参加したミャンマー人留学生】
当日は、市内3会場(①鴨池海岸 ②湊・大新田海岸 ③織田ヶ浜)同時で午前中に海岸清掃が実施され、筆者と留学生3名は②湊・大新田海岸を選んだ。同所の参加者は32名いたが、市内小学生や今治北高校生、愛媛大学生など若い世代もいて、楽しみながらゴミを集める姿が印象的だった。
どういうゴミを拾ったかをチェックできるよう、参加者には「海ごみビンゴシート」が手渡され、9種類全部拾うと後で3枚の抽選券と引き換えできるシステムになっていた。
【海ごみビンゴシート】
同所は4年くらい前から、「ビーチクリーンしまなみ」を中心に海岸清掃を定期的に実施しているが、それでも漂着ゴミが尽きないという。パッと見きれいに見えていた海岸にも、小さなマイクロプラスチックや牡蠣パイプ(まめ管・ロング・ワッシャー)を多く見つけることができた。定番のペットボトルやビン・缶、発泡スチロールは、テトラポット(消波ブロック)の中に隠れていた。太い舶用ロープやタイヤは、砂に埋もれて人力では取り出せないものもあった。最終的に、同所では1時間ほどの作業で61.7㎏のゴミを拾い集めることができた(織田が浜は、40名で23.9㎏)。
【テトラポットでの作業】
ゴミ拾いの後は、「ビーチクリーンしまなみ」の宇佐美浩子さんから講評があり、ビーチクリーンの意義について学んだ。〝捨てないことも大切だが、漂着ゴミをコツコツ拾い続けることで、この瀬戸内海のゴミを減らし、世界に誇れる取り組みや美しい景観につなげたい〟とのことであった。
【海ごみ問題についての講話】
さらに、㈱MIDORIYAによる漂着ゴミの漁網を使ったワークショップ「海ごみハンドクラフト」もあり、漂着ゴミがアート作品(ドリームキャッチャー)に生まれ変わる楽しさも味わうことができた。筆者としては、この経験を授業に生かし、再び学生を引率して今治市内のなぎさに出かけたいと思う。多文化共生社会を推進する愛媛にあって、外国人にもビーチクリーンの活動にご参加いただき、一緒になって海ごみ問題の解決に取り組めれば幸いである。
【集合写真】