レポート
2024.08.20

愛媛の車窓から① ~内子の焼きサバ~

月に1度、今治明徳短期大学地域連携センター長・大成経凡さんに寄稿していただく海にまつわるコラム。

今回は、「愛媛の車窓から① ~内子の焼きサバ~」です。

 

昨年度から、私は今治明徳短期大学の入試広報委員長となり、学生募集で愛媛県内の高校訪問をする機会が増えました。一日4校を訪問するのは珍しくなく、時間を稼ごうものなら高速道も使います。しかし、内子町と伊予市の移動には、下道の国道56号を使い、山峡の景観を眺めながら走行すると(いつも海ばかり見ているので)気分転換になります。

 そんな中、内子町と旧中山町の区間を走行していると、〝焼きサバ〟の看板やのぼり旗に目を奪われました。「なんで、こんな山間部で焼きサバなんだろう?」今治市出身の私は、サバを看板商品にしたお店をそれまで目にしたことがありませんでした。同乗している同僚も新居浜市出身のため、この謎に迫ることができなかったのです。今治の海鮮料理店では、一本釣りのマダイ・スズキ・サワラなどの鮮度ある刺身やメバル・アコウなどの煮つけが主役といえるものでした。サバはどちらかというと、家庭の食卓で塩焼きや味噌炊きで登場する地味な魚でした。

 その後、内子町の道の駅「内子フレッシュパークからり」と大洲市のJAたいき産直市「愛たい菜」で、この焼きサバの店頭にならんだ光景を目にしました。

[店頭に並ぶ焼きサバ(からり)]

一匹まるごと焼いて串で刺した状態で売られているのです。アユやアマゴの塩焼きなら理解できますが、なぜサバなのか…。とても気になって郷土資料の『内子町誌』を調べてみましたが、残念ながら焼きサバについての記述は見当たりませんでした。

 今年4月、お彼岸で母の里・八幡浜へ行った帰りに、国道56号沿い・内子町城廻地区の「あおいの焼きさば」を訪ね、店員に訊いてみることにしました。

[城廻地区(国道56号)]

すると、焼きサバは〝内子名物〟のようで、地元のソールフードといえるものだったのです。そのお店では、ノルウェー産のサバを使っていて、炭火で焼いていました。ガス火で焼くお店も町内にはあるようですが、炭火の方が美味しく焼けるのだとか。大きさによって微妙に値段が違っていて、私は1,000円弱のものを買いました。他のお客に対してもそうでしたが、値段よりも100円負ける点に内子人の気質を感じたような気がします。

[焼きサバ調理中(あおい)]

[炭火焼きの「焼きサバ」(あおい)]

私がお店の前に駐車すると、群集心理なのか、次々と他の車が停車してきました。煙があがらなくても、お客がいると分かれば買いたくなるのでしょう。実は、「からり」へその後何度か行きましたが、売り切れ場面に遭遇しました。買いたいと思ったら、すぐ買わないといけないのが焼きサバのようです。早速、自身のSNS(Facebook)で焼きサバの記事を掲載すると、南予出身者の食いつきがよく、やはり内子では昔から親しまれている名物だったのです。色々と食べ方があるようで、私はそのまま箸でつついて家族3人で食べましたが、松山出身の妻にも、骨付きの焼き魚を敬遠する小学生の息子にも好評でした。しかしなぜ海のない盆地の内子で焼きサバが定着したのかの理由は分からず、足がはやい(鮮度が落ちやすい)から焼くことで保存の工夫をはかったと推測するしかありません。いつかこの理由(歴史背景)を解明したいと思います。

 

愛媛の車窓から② ~田之尻のシラス干し~に続く。

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イベント名愛媛の車窓から① ~内子の焼きサバ~
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