レポート
2024.08.24

愛媛の車窓から② ~田之尻のシラス干し~

月に1度、今治明徳短期大学地域連携センター長・大成経凡さんに寄稿していただく海にまつわるコラム。

今回は、「愛媛の車窓から② ~田之尻のシラス干し~」です。

 

今治市菊間町田之尻(たのしり)地区は、ご当地検定の「いまばり博士」(今治商工会議所主催)では今治市西端の場所としてよく出題されます。

[田之尻地区(国道196号)]

国道196号沿いの小さな漁村集落で、30年ほど前にはうなぎ屋のお店が流行ったことがありました。近年は、夏季にこの地区を通る際、私はシラス干しの光景がとても気になるようになりました。人呼んで、そこは〝ちりめんじゃこストリート〟。シラスは、ある固有種の魚の名称ではありません。身体に色素が乏しい白っぽい稚魚・仔魚の総称をいい、カタクチイワシなどがこれに該当するようです。塩ゆでにして干した加工食品を〝シラス干し〟や〝ちりめんじゃこ〟と称します。愛媛のご当地レストランで釜揚げシラス丼をよく見かけますが、こうした干し場の光景は将来的に見られなくなるのではという危惧を感じております。夏季のご当地の風物詩として、未来へ残したい風景遺産なのです。[乾燥ちりめん]

今年の8月5日に知人を松山空港へ送った帰り、その干した光景を写真におさめようと田之尻地区で直売所を営む「越智水産」を訪ねました。残念ながら干し場にシラスは干されていませんでした。店員に尋ねると、今年は不漁のようで、翌日は出漁予定になっているが、あまり期待しない方がいいとのことでした。仕方なく、当店人気の釜揚げシラスを買って帰ることにしましたが、1パック500グラム超え500円という安さに驚きました。

[干し場と1パック500円の釜揚げシラス]

地元スーパーの店頭だと、50グラム約250円と知っていたので、直売所の浜値に衝撃を受けました。沖に目をやると(母港が田之尻漁港であろう)漁船が網を曳いていたので、まさに地産地消のありがたさを強く感じたものです。
 そして翌日、職場から片道30分弱の距離ですが、お昼休みを利用して撮影に出かけました。ダメ元という思いで現地に到着すると、一区画分の干し場にシラスが干されてありました。[越智水産の干し場]

インターネットを検索すると、過去のブロガーたちの記事に、すべての区画で干されてある画像を目にすることができました。シラスの漁獲量が減っているということは、それをエサとする魚たちの数も減っているということで、生態系の変化を心配するところであります。今夏は特に猛暑が半端なく、確実に海水温も高くなっていることと思います。シラス卵かけご飯を自宅で食べましたが、浜値で買ったシラスを思う存分食べ、海の恵みに感謝したしだいです。

 

終わり

 

 

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