南の楽園へゆく①

2023-10-20
海と日本PROJECT in えひめ

月に1度、今治明徳短期大学地域連携センター長・大成経凡さんに寄稿していただく海にまつわるコラム。

今回は、「南の楽園へゆく」①です。

 

今年の夏も、8月15日は母の故郷・八幡浜の花火大会を観賞することができ、夜は同所のホテルで一泊することにした。母を22年前に亡くして以降、遠ざかっていた八幡浜がより身近に感じられるようになった。夏が来れば、幼少期に過ごした八幡浜のお盆休みを想い出す。昨年は、一泊した翌16日に愛南町御荘まで自家用車で移動し、太平洋戦争末期の海軍戦闘機「紫電改」を家族(妻と小学3年生の長男)と一緒に観光した。

➀紫電改(展示館)

[紫電改(展示館)]

その後は、高知県宿毛市経由で四万十川の沈下橋を5本観光してから、今治の自宅へ帰ることになった。

今年は、一泊した翌16日に家族で愛南町御荘の南レクジャンボプールへ行くことになり、自分が幼少期の頃と変わらない流水プールに懐かしさが込み上げてきた。

➀南レクジャンボプールの造波プール

[南レクジャンボプールの造波プール]

 

初めて訪ねたのは小学生低学年の時で、八幡浜から叔母に連れられて従兄弟たちと汽車で宇和島まで移動し、その後はバスに揺られたように記憶している。その時は紫電改と宇和海海中公園を観光しているので、紫電改展示館がオープンした昭和55年(1980)かその翌年あたりに訪ねたのだろう。当時はジャンボプールのスケールに驚き、従兄弟たちが流水プールや大きな滑り台(スライダー)ではしゃぐなか、泳ぎが苦手な私は一番小さな滑り台さえもが怖くて、苦い想い出の方が勝っている。

➀南レクジャンボプールのスライダー

[南レクジャンボプールのスライダー]

このプールは、愛媛県主導で昭和48(1973)年に発足した南予レクリエーション都市整備事業の一環で同53(1978)年7月1日に開園している(愛媛県など出資の第3セクター・南レク株式会社に施設運営を委託)。昭和48年生まれの私としては、自らの年齢(50歳)に近い施設ということで親近感がわく。同事業で昭和52(1977)年に運用開始となった御荘湾ロープウェイは平成18(2006)年に廃止され、耐震強度不足で南レク宇和海展望タワーも令和元年(2019)年から休止となっている。昭和54年にオープンした愛南町最大の宿泊所だった「ホテルサンパール」(サンパール観光会社)も、令和4(2022)年4月に閉館(破産)し、〝南の楽園〟は、地域の衰退を映しだす鏡のように往時の輝きを失いつつある。

 

それでも、40数年ぶりの南レクジャンボプールは、あの頃と変わらない賑わいがあった。妻も同様に、オープンして数年たった頃に、父親が運転する自家用車で松山市から揺られ、丸一日がかりの日帰り家族旅行だったようだ。当時は高速道路もなく、いわゆる下道の国道56号を通って、いくつもの峠道を乗り越えた先に〝南の楽園〟が待っていた。父親も流水プールで子供たちと一緒に泳いだため、帰りの運転で足がつらないか、母親はそのことが気がかりでならなかったようだ。あの当時の子供が今では親となり、自らの子供たちと一緒に想い出の場所で楽しんでいる。やはり、私にとっては〝南の楽園〟なのだ。今治からだと日帰りはできないが、八幡浜をベースキャンプ地にすれば1泊2日で家族旅行を楽しめる県外同等の風土の違う観光地といえる。

 

午後は、宇和海海中公園の海中展望船に乗り込んだ。

➀海中に沈んだ展望室

[海中に沈んだ展望台]

そこは、足摺宇和海国立公園内にあり、日本初の海中公園指定(1970年)となった海域である。昨年は強風による荒天で出航できず、残念な思いをした。リアス海岸が多く、波が穏やかな印象の宇和海だが、豊後水道南部にあって太平洋が近い。風が吹けばうねるのだろう。32歳の頃、私は内航貨物船の船員を1年余り経験し、東京湾から九州門司まで航行することがあった。紀伊半島沖まで差しかかった際、高知沖を通って豊後水道を北上するコースをとると知って喜んだものだ。理由は、紀伊水道を北上して、瀬戸内海の島々を当直する煩わしさを回避できるためだが、その思いは後で後悔の念にいたる。外海はうねりが大きいため、499総㌧クラスの貨物船は左右にローリングし、夜間の安眠がかなわなかったからだ。そんな苦い経験が脳裏によみがえってきた。

 

南レクジャンボプールから10分ほどで、海中展望船「ユメカイナ」と「ガイアナ2」が発着する船越港(旧西海町)に到着した。

 

➀水中展望船「ユメカイナ」

[水中展望船「ユメカイナ」]

わが家族は「ユメカイナ」(19総㌧)に乗船したが、同船は特殊な構造をしていて、沖の目的地までいくと客室だけが潜水艦のように水面下へ沈み、海底のサンゴやカラフルな熱帯魚などを観察できるのだ。魚自体は、同船をクジラのような大型生物と見ているのか、警戒なく自由に泳ぎ回っている。その時、キビナゴの大群が姿を見せ、小さなお子様連れの乗客から歓声があがった。地上の水族館とは違い、船内から海中の生き物を観賞できるのは希少な体験である。料金は大人2,200円・小人1,100円で、これって「夢かいな?」と、竜宮城にでも行った気分にひたることができ、お値段以上の感動を味わえる。黒潮の影響を受ける西南四国の地の利と特殊船のお陰で、こうした海に親しむ経験ができることを、より多くの人々に知って欲しい。

 

【来月に続きます】

イベント名南の楽園へゆく①
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