第28回水軍レースに参加して<上>

2023-9-8
海と日本PROJECT in えひめ

月に1度、今治明徳短期大学地域連携センター長・大成経凡さんに書いていただく海にまつわるコラム。

今回は、「第28回水軍レースに参加して」です。

 

まちづくりイベントも、四半世紀(25年)つづけばホンモノだろう。地域に根付く年中行事さえもが、過疎化や少子高齢化、ライフスタイルの変化で消滅・縮小・形骸化する中で、その存続意義を考えるコロナ禍の3年間だったように思う。筆者の住む今治市でも、今年の春祭りから獅子舞芸能(継ぎ獅子)が復活し、もとの日常生活が戻りつつあるように思う。そうした中、炎天下の7月30日、4年ぶりに今治市大島の宮窪港で水軍レース大会が開催された。筆者はボランティアスタッフとして参加し、このイベントに対する思い入れは、紹介すると長くなりそうだ。

 もう32年前のことになるが、筆者は18年間住み慣れた今治を離れ、大志を抱いて東北地方の大学へ進学した。あえて見知らぬ異文化の地域に身をゆだね、そこで何かを得たいと考えた。4年間で得たものは、故郷へ戻り、地域文化を生かしたまちづくりに貢献したいというもので、特に村上水軍の歴史に心酔した。今でこそ、学術成果を反映して〝村上海賊〟という用語が定着しつつあるが、あの頃は瀬戸内海の覇者を連想させる〝水軍〟であった。そして、それを実感できたのが、村上水軍ゆかりの小型快速船「小早船」(こばやぶね)を使った地域イベント〝水軍レース〟であった。和船に乗り込んで櫓(ろ)を漕いで速さを競うなど〝時代遅れ〟と感じるかも知れないが、これを四半世紀も続けてきた背景には、仕掛人のコダワリと参加者をとりこにする魅力があったことになる。

㊤水軍レース初代の小早船(村上海賊ミュージアム)

<㊤水軍レース初代の小早船(村上海賊ミュージアム)>

筆者が大学生の頃は、まだ瀬戸内しまなみ海道は開通しておらず、大三島橋(1979年開通)と伯方・大島大橋(1988年開通)の2つの橋で大三島・伯方島・大島の3島と大三島町・上浦町・伯方町・宮窪町・吉海町の5町がつながっている状態であった。その中でも、筆者の目に、住民主体のまちづくりで最も輝いて見えたのが宮窪町で、村上水軍の歴史を巧みに生かそうとしていた。平成5(1993)年夏、筆者が大学2年生の時に第1回水軍レース大会は開催された。その仕掛人に卒業論文で取材を行ったが、彼らは町内に住む40歳代の男性10名ほどで構成される〝水軍ふるさと会〟というまちおこしグループであった。

そもそも水軍レースの楽しさって何だろう? 筆者が勤務する今治明徳短期大学の学生有志に体験を促した。まず、1隻の小早船には左舷に3本、右舷に2本、合計5本の櫓が備わり、1本を2人で漕ぐため10人の漕ぎ手が必要となる。さらに、他船と接触(クラッシュ)の恐れがある場合は、これを竹竿で突き放す竿持ちが1人必要で、立ち位置は船首部分となる。もう1人、船尾部分に舵持ちの同乗が認められるが、重量を考慮してこれを載せないチームもあり、竿持ちと舵持ちが艇長(コックス)のような役割で号令をかけるとリズムをとりやすくなる。それぞれの櫓がバラバラだと、船体はローリングして失速し、左右いずれかに曲がって進んでしまう。今年のレースでも、200m先のゴールにたどり着けず、棄権となったチームがいくつも見られた。

わが短大チーム「めいたんプロモーションクルー」は、本番直前まで舵をつけるかどうか決まらなかった。舵を装着するということは、まっすぐ進む自信がないと周りから判断されるため、プライドから付けないチームも見受けられる。でも、それは強豪チームの話である。わがチームはレース直前で舵を装着する決断をし、遅いながらも最短コースを航行し、無事に完漕することができた。そもそも、ほぼ全員が櫓の和船を漕ぐのは初めてで、練習は授業と休日の2回実施したが、櫓の操作がどういうものかを知るにとどまった。最初の練習では、ローリングで船酔いし、すぐに陸へあがって休憩をとるものもいた。バイトを理由に、大会への参加を拒む学生が多く、ついには海を知らない中国内陸部出身の男子留学生2名に助っ人をお願いし、参加人数の確保にいたったのである。

㊤練習風景(一応、授業です!)

<練習風景(一応、授業です!)>

わがチームは「一般の部B」にエントリーした。当初、出場チームのカテゴリーは「一般の部」と「女子の部」しかなく、一般の部は男女混合でも参加OKである。近年は、わがチームのような初出場やこれまで決勝戦に勝ち上がったことのない弱小チームのために「一般の部B」が設けられ、「一般の部A」との差別化をはかって、トーナメント1回戦で1位となれば、次戦は決勝というシンプルな大会運営となった。ただし、参加チームの少ない「女子の部」では、1回戦で2位でもタイム差で拾われて決勝に進む場合もある。

忘れてならないのは、各カテゴリー1位から3位までが賞金をゲットでき、優勝トロフィーはご当地の大島石製ということである。4年ぶりの今年は、大会を盛り上げようと「一般の部A」の優勝賞金が過去最高額の50万円となり、強豪チームの意気込みが違っていた(Bと女子の優勝は20万円)。果たして、栄冠はどのチームに、そしてわが短大チームの結果やいかに…。

㊤旗指物が集う開会式

<旗指物が集う開会式>

 

㊤一般の部A_決勝戦

<一般の部A_決勝戦>

 

㊤優勝旗(鵜島公民館)

<優勝旗(鵜島公民館)>

 

<来月に続きます。>

イベント名第28回水軍レースに参加して<上>
日程2023年7月30日
場所今治市大島宮窪港
  • 「第28回水軍レースに参加して<上>」
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